第14回 くすのき建築文化賞コンクール

くすのき文化賞ご挨拶

 正会員、賛助会員の皆様には平素より当協会の活動、事業に多大なご協力ご支援賜りまして心から感謝申し上げます。
「くすのき建築文化賞」は平成2年に兵庫県にて開催された全国大会終了後に基金を蓄え、良い建築に対する一般社会の理解を高め、建物の社会的意義を発信し、建築の設計が街づくりにいかに大切であるかの啓蒙活動の一環として賞を設置し、若手建築家の育成のため優秀作品を表彰することを目的に隔年開催してまいりました。
 今年で14回目となりますが、今回は審査委員長として新たに神戸芸術工科大学環境デザイン学科 川北健雄教授をお迎えし、私をはじめ建築友好4団体の会長が審査委員となりました。
残念ながら“新型コロナウィルス感染症”の影響もあり、内規応募基準を満たした応募作品は、例年に比べ少なく6作品に留まりました。その中から最優秀作品1作品、優秀作品1作品を選出いたしました。
 前回までは応募時の提出資料が少なく、応募作品の内容がわかりにくかった反省点から、今回は建築概要・アピールポイント・詳細説明等の項目の統一を図り、さらに提出写真の枚数も増やし、より詳細な審査が行える応募様式といたしました。
 次回はより多くの会員の作品応募を期待いたしております。どうかよろしくお願いいたします。

(一社)兵庫県建築士事務所協会 会長 柏本 保

受賞作品

最優秀賞

< AOYAMA花苑 >

建築主名 株式会社 姫路生花卸売市場
所在地 兵庫県姫路市下手野3丁目1-5
設計者名 株式会社y+M design office
三宅 正浩

優秀賞

< ゲストハウス新築工事 >

建築主名 日伸カーペット 株式会社
所在地 兵庫県芦屋市奥池町
設計者名 株式会社エトス・アソシエイツ
一級建築士事務所
浅野 静

第14回くすのき建築文化賞コンクール 審査講評

くすのき建築文化賞コンクール選考委員会

審査委員長 神戸芸術工科大学 教授 川北 健雄
審査委員 (公社)兵庫県建築士会 会長  (公社)日本建築家協会近畿支部兵庫地域会 地域会長
兵庫県建築設計監理協会 会長 (一社)兵庫県建築士事務所協会 会長

 第14回くすのき建築文化賞コンクールには、作品部門に6点の応募があった。「景観や環境づくり、住文化に役立つ建築」、「人にやさしい建築」といった評価の視点から、提出された資料にもとづく審査を行った結果、審査委員全員の合意により、最優秀作品1点および優秀作品1点を選出した。

 最優秀賞に選出された「AOYAMA花苑」は、姫路市の国道沿いに建つ生花店である。ロードサイド型店舗の多くでは、車の走行速度に合わせた大きな広告看板が設置され、それらの集積が雑然とした沿道景観を生み出している場合が多い。これに対して、本作品では、建物と外部空間を一体的にとらえ、目立つサインの代わりに、商品として配置される植物をも含めた空間構成要素すべてを組み合わせることで、イメージアビリティの高い特色ある外観が創り出されている。
 敷地は、ほぼ並行に走る国道2号線と西国街道との間にある。雁行配置された屋根は、適度な分節によって背後の古い街並みを受け止める一方、まとまりのある庇下空間を、走ってくる車の方に差し向けている。歴史的にも空間的にも性質の異なる周辺環境が、これらの工夫が施された店舗の存在によって、見事につなぎ合わされている。
 建物内部にも、多様な植物を受け入れるべく、太陽の動きに応じて光の状態が変化するさまざまな空間が用意されている。来訪者は二方向に展開するルーバー状の垂木の下で花と緑の間を散策し、見え隠れする眺めの変化を楽しむことができる。 ロードサイド店舗に求められる機能を満たすと当時に、背後の周辺環境にも敬意を払い、結果として地域全体の魅力の向上に資するような、実に秀逸なデザインが、ここに具現化されている。

 優秀賞に選出された「日伸カーペット(株)ゲストハウス新築工事」は、芦屋川上流部の良質な住宅街に隣接している。斜面地防災を兼ねた基礎上に、谷間に広がる風景を受け止める形で建物を配置し、すべての居室が周辺の自然環境とのつながりを享受できるよう、平面と断面の双方において巧みな計画がなされている。

 今回は応募数こそ少なかったものの、くすのき建築文化賞の目的に沿った、優れた建築作品を選出できたことは、審査委員全員の喜びである。次回は、さらに意欲的な多くの応募作品が寄せられることを期待したい。